PATに関わるFAQ

入力、操作方法に関する質問

Q:PATで血中濃度を入力する際にtroughとmaxがありますが、1時間点滴で12時間ごと投与の場合、C11=troughですか?MaxはC0?C1ですか?

A:その場合、C11はトラフです。maxは点滴終了時点になります。C+数字は、点滴終了後”数字”時間後、という意味です。なのでmaxはC0になります。


Q:現行のPATでは、トラフ、ピークの入力は5濃度までとなっています。また、繰り返し回数も48回までしか選択できない状態かと思います。現在、長期投与されている症例があり、継続のシミュレーションを行いたいと思っています。 以下2点について、推奨方法がございましたら教えていただければ幸いです。
・3回以上トラフ、ピーク採血を行った際は、直近の濃度から優先して入力で良いか。
・48回以上投与している場合、投与量が変わらない回数を一部省略し、全部で48回として入力でよいか。


A:いずれもその対応で差し支えありません。ただし、定間隔投与を続けている場合は、〇回投与後の選択肢を「SS」としてシミュレーションすることもご考慮ください。SSとは、定常状態(steady state)の略です。定常状態でのシミュレーションをする場合がこの選択肢です。この場合、実投与量1に維持量を入力し、繰り返し回数をSSとしてご入力ください。また、実測濃度もSS回投与後として入力してください。なお、実投与量2の項目は無視されます。49回以上などの繰り返し投与を行えば、定常状態に達していますので、SSを用いる場面になります。


Q:VCM TDMにおけるPATの使用方法について質問があります。1日のうちに違う用量で投与(例・10:00に1000mg、22:00に500mg)し、それを継続している場合、投与歴はどのように入力すればよいでしょうか。上記例の場合、 1000mg 投与間隔12時間 繰り返し回数1
500mg 投与間隔12時間 繰り返し回数1



と入力していけば正しい計算結果が出るのですが、投与歴の入力欄が6行のため、3日の投与で投与歴が埋まってしまいます。


A:確かに、不均等投与には対応していない現状があります。おそらくはバイアルの無駄をなくすため(0.75g×2では4V/day、1g+0.5g/dayでは3V/day)の対応と思います。対応策を考えてみますが、時間を頂ければと思います。


Q:PATでAUCを推定する場合、血中濃度測定値は6ポイントまで入力することが可能fですが、6ポイントを超える場合はどう対応することが望ましいですか。

A:6ポイントを超える場合に限らず、直近(例:最終測定日のみなど)の数ポイントを入力してください。数日の経過で血中濃度が複数測定され、その都度投与量調整を行った場合、PKが変化している可能性が考えられます。その場合、 現在のPKを説明するには不適切と考えられる過去の血中濃度測定結果は、PATでのAUCの計算には使わないことが推奨されます。


Q:PATの実測血中濃度入力についてなのですが、〇回投与後の選択肢が48までしかありません。49回目以降の血中濃度結果はどのように入力すればよろしいでしょうか。また選択肢内に「SS」とありますがどういった意味でしょうか。

A:今回は、〇回投与後の選択肢を「SS」としてください。SSとは、定常状態(steady state)の略です。定常状態でのシミュレーションをする場合がこの選択肢です。この場合、実投与量2の項目は無視されます。49回以上などの繰り返し投与を行えば、定常状態に達していますので、SSを用いる場面になります。


Q:動画をみましたが、例えば長期投与する場合の方法がわかりませんでした。操作方法について参考にするようなサイトなどございますでしょうか?

A:長期投与については、入力上は対応していない現状があります。PATでの長期投与において血中濃度測定を定期的に行う場合の 対応としましては、初期の薬物動態パラメータは信頼できなくなりますので、その都度の採血結果に基づいて、投与量調整を行うことが推奨されます。従いまして、長期投与になりましたら、初期の投与計画は省いて、最新の血中濃度測定時点の用法用量において、定常状態の繰り返し投与での薬物動態解析を行っていただければと思います。


Q:PATの操作方法についてですが、血中濃度入力の項目に“○回投与後”がありますが、最大48回投与後迄しか入力できません。プルダウンメニューにもありませんし、直接入力しても消えてしまいます。49回以上は対応できないのでしょうか?

A:定常状態に採血された血中濃度であれば、 AUCを算出するという目的のためには、 繰り返し回数で”SS”と入力して対応することをご検討ください。


Q:PATの腎機能の入力についてはScrからCcrが計算される仕様となっていますが、eGFR、eGFRcys、実測値等を用いた解析を行うことは可能でしょうか。
eGFR/0.789の計算からCcrを算出し解析している文献があり、その値をPATのCcrの欄へ代入し解析ができればと考えておりました。
また可能な場合、そのような使用での文献や発表等があるのかどうかも併せてご教示いただけると幸いです。
当院の患者の特性上腎機能評価が難しく、シスタチンCでの評価を用いた解析を行いたいと考えており、PATを継続して使用するためにはどのような方法がよいか検討しておりました。


A:eGFR、eGFRcys、Ccrの実測値等を用いた解析を行うことは可能です。単位としては患者個別の体表面積を考慮して、mL/minに調整してご利用ください。
シスタチンCや実測により観測されたCcr(mL/min)を、Ccrの箇所へ直接ご入力いただければと思います。すくなくともPATにおいて、このような対応による報告や文献は知る限り有りませんので、よい報告になるかと思われます(ver 3.0からは、シスタチンCについては身長も含めて入力すると、シスタチンCによるeGFRからバンコマイシンのクリアランスを自動で算出するようになりました)。

Q:採血結果を入力する欄が複数個所ありますが、その症例について、血中濃度の全採血結果を入力するのでしょうか?それとも最新の採血結果のみ入力するのでしょうか?
例えばバンコマイシンを投与中であり、投与3日目、6日目に採血したとします。1回目の採血日と2回目の採血日は異なり、クレアチニン値も異なっています。クレアチニンは最新結果のみ入力して血中濃度の採血結果は2回とも入力するのか迷います。当院の症例で入力したところ、最新の血中濃度の採血結果のみ入力するとグラフから逸脱し、2回の採血結果を入力するとグラフ上にうまく採血結果が乗りました。


A:直近のScrを使用します(そういった意味で、母集団解析とベイズ推定でおのずとAUCは異なってくる)。個人的には大きな差がなければ2回のTDM結果を入力しますが、腎機能変化が顕著な場合は直近のTDM結果のみとしています。


Q:データ入力するときの投与間隔についてです。例えば24時間おきに3回投与し、採血結果により増量を考慮し、12時間おきに変更して6回投与した症例です。3回目の後、12時間後に投与したにも関わらず、24時間後の投与としか入力できません。このような場合はどのように入力したらよいでしょうか?

A:3回目の投与を、12時間毎の投与として1回投与したことでご対応ください。


Q:患者データ、投与歴、実測血中濃度情報を入力、「グラフ描写/ベイズ推定」をクリックして、グラフ描写した状態となりますが、この状態で推奨投与設計にデータ入力するとAUC/MICやトラフ値が表示されます。ここで再度、「グラフ描写/ベイズ推定」をクリックすると、AUD/MICやトラフ値が変わるんですが、この状態の値が正しいものなんでしょうか?それとも、再度「グラフ描写/ベイズ推定」をクリックする前の値が正しいのでしょうか?

A:確かにご指摘の現象が確認されました。実測濃度入力後、仕様としては「グラフ描写/ベイズ推定」のボタンを押すと「推奨投与設計(任意)」の項目(1 or 2)では、「ベイズ推定による推奨 投与量」と表示され、投与設計に使用されています。しかし今回確認された現象では、そこから「推奨投与設計(任意)」の項目(1 or 2)に投与設計を入力すると、「母集団平均値による推奨 投与量」に戻ってしまうことが有るようです。その場合は、再度「グラフ描写/ベイズ推定」ボタンを推して、「ベイズ推定による推奨 投与量」と表示された状態でAUC/MICやトラフ値をご参照頂く必要があります。 この現象は必ず起こるわけではないようです。担当者の印象としては、早い入力、キーボード操作となった場合にこの現象が起こるようですので、パソコンのスペック、ネットワークの速度、PATの同時アクセス状況、操作者などの影響で起こりうると考えられます。本件、しかるべき周知を行って参りたいと思います。


Q:採血タイミングを入力する際のtroughとは具体的に投与何分前を設定されているのか?

A:次回投与開始時点です。投与0分前、という表現になると思います。


Q:PATのデータの保存ができません。

A:Web版については、使用するブラウザでも対応は異なるかと思われますが、ダウンロードフォルダがどのように設定されているかをご確認いただければと思います。
ローカル版では保存ボタンを押しても保存ダイアログは開かれず、その左側に示した保存ファイル名が適切であれば、保存されています。PATフォルダ内をご確認ください。csvファイルが作成されていると思います。ただし、書き込み可能な領域でなければ保存は失敗しますので、PATは書き込み可能な領域でご使用ください。


Q:グラフが報告書に上手く貼り付けられません。

A:右クリックして“画像をコピー”などを行えばコピーされます。しかしそのままWordやPowerpointなどへ“Ctrl+V”や、右クリック →“貼り付け”など行っても、パソコンによっては貼り付けられないことがあります。
その場合の解決方法として、貼り付けるときに“形式を選択して貼り付け” で貼り付けることが出来ます。“形式を選択して貼り付け”は、
①貼り付けた際の右下のダイアログ
②右クリックで“形式を選択して貼り付け”
③メニューバーの左端より“貼り付け”の下の三角(▼)をクリックする
のいずれかにて実施可能です。
また、スクリーンショットを撮影して適宜トリミングを行えば、画面の好きな範囲を切り取ることが出来ます。スクリーンショットは キーボードの右上の方にある“ Print screen”や、WindowsであればSnipping tool”という標準機能を使用可能です。インターネットブラウ ザの機能としてスクリーンショットを撮影することも可能であり、例えばFirefoxならば画面の図形以外の部分を右クリックすると、“ スクリーンショットを撮る”という項目が選択できます。

小児に関する質問

Q:生後3カ月以上の小児にも対象となったとのことで小児のTDMについてです。抗菌薬TDM 臨床実践ガイドライン2022の時点ではPATが小児の対応となっていませんでしたが、PATver3.0からは成人と同様に2点採血を原則推奨でよろしいでしょうか。

A:いいえ、ガイドラインとして小児におけるAUC guided dosingおよび2点採血を推奨しているものではありません。米国のガイドラインでは小児のAUC-guided dosingも推奨されていますが、日本でも可能になった、とお考え下さい。
また、母集団平均にもとづく初期投与設計での活用は検証が必要ですが、小児でもトラフよりAUCガイドが腎障害リスクを低減する可能性があります。
TDM結果によるベイズ推定では、小児ではone-point採血が現場では望ましいですが、one-pointとtwo-pointの精度の差も今後の課題です。


チェックボックスに関する質問

Q:PATver3.0からのICUや急性腎障害リスクなどのチェックボックスについてはTDM結果に影響しているのでしょうか。

A:いいえ、現時点では、Resultのエリアに推定誤差が大きい可能性を注意喚起する程度です。ただし、今後はTDM結果(AUCの値)に反映される可能性、安全性や有効性に貢献できる可能性がありますので、可能な範囲でチェックをつけていただければと思います。PATをさらにversion upするため、集積されたデータを分析する上でこれらのチェックが必要ですのでご協力お願いします。現時点では、1症例毎で,これらの因子があったとしてもAUC値に反映する自動計算は行いません


Q:PATに著名な筋肉量低下、その他の筋肉量低下、にチェックした場合、0.6のラウンドアップにチェックを入れなくても、もともとのCr0.6以上であっても、ベイズ推定AUC、トラフが上昇するのですが、どのような根拠のもと、どのような内部計算が組み込まれているのでしょうか?補足説明を一読してもわかりませんでした。お手数ですが、お時間あるときにご教示お願いいたします。

A:ver. 3.0のアップデートにて、筋肉量低下にチェックした場合、血清クレアチニン値により計算されたクレアチニンクリアランス>85 mL/minの場合に、バンコマイシンクリアランスを3.51 L/hとする補正が加えられています。これはPATの薬物動態モデルの原文で採用されている対応になります。 Yasuhara M, Iga T, Zenda H, Okumura K, Oguma T, Yano Y, Hori R. Population pharmacokinetics of vancomycin in Japanese adult patients. Ther Drug Monit. 1998 Apr;20(2):139-48. doi: 10.1097/00007691-199804000-00003. PMID: 9558127. ご報告いただいた状況は、おそらくCcrが85を超えている症例なのだと思われます。

母集団薬物動態モデルについて

Q:『PAT』に登録されている日本人成人の薬物動態解析データに関して以下の内容に関して具体的な数字があれば教えていただきたいです。
お忙しいところ申し訳ないのですが、今後当院でも『PAT』を導入したいと考えているのでご回答いただければ幸いです。
・母集団の人数:何人
・年齢:何歳~何歳
・体重:何kg~何kg
・血清クレアチニン:何mg/dl~何mg/dl


A:母集団の人数:190名
・年齢:19歳~89歳
・体重:25.5kg~75.0kg
・血清クレアチニン:0.20mg/dl~13.4mg/dl
分布の型など、詳細には原著論文をご確認いただければと思います。
Yasuhara M, Iga T, Zenda H, Okumura K, Oguma T, Yano Y, Hori R. Population pharmacokinetics of vancomycin in Japanese adult patients. Ther Drug Monit. 1998 Apr;20(2):139-48. doi: 10.1097/00007691-199804000-00003. PMID: 9558127.


Q:バンコマイシン TDM ソフトウェア PATの対象年齢は具体的に何歳以上でしょうか?

A:薬物動態解析モデルの報告(Yasuhara et al. TDM 1998)では、解析した集団の下限は19歳ですが、PATでの対象年齢は18歳以上と考えて差し支えないと考えられます。


PATの取り扱い、システムについて

Q:このPATシステムを個人的にダウンロードさせて頂いて、自宅等でも解析ができるようにしたいと思っておりますが、やはり、それは不可でしょうか?

A:会員の個人使用については問題ございません。学会員が施設でAS活動の中心的役割を果たしているのであれば、院内に限定して、非学会員がソフトを使用できる環境を提供することは問題ないと考えています。 ただ、間違った使用法を行わないように、学会員が指導をよろしくお願いします。


Q:抗菌薬TDMガイドライン2022でのPATソフトに関して研究目的での使用が可能か、確認のためご連絡いたしました。

A:臨床研究にご活用いただく際は、PATの原著論文(引用文献3)を引用ください。もしも、論文にPATのアクセスWebアドレスを求められた際は、アドレスを直接記載すると全世界からアクセスが集中する懸念がありますので、サンプルページ(https://pharmacokinetic-simulation.shinyapps.io/app-ver1/)を記載するようにお願いします。


Q:さしあたりお伺いしたいのですが、ダウンロード版の取り扱い説明書に、対応OSに関して「Windowsのみ(Mac版は準備中)」と記載があったのですが、Windows10での対応は確認できたのですが、こちらはWindows11には対応されておりますでしょうか?また、今後Mac版を配信される予定がありましたら、現時点での配信予定時期などは決まっておりますでしょうか?

A:対応OSについては、Windows 11での動作確認はこちらでは行っておりませんが、これまでにWindows 11での動作不良の報告はいただいていないという状況です。Mac版についてはまだ公開の予定は定まっておりません。


学術的質問について

Q:今回の米国ガイドラインでは、初回モニタリングとして24~48時間以内の実施が推奨されています。初回(1回目)投与後のピーク濃度→トラフ濃度(2回目投与前)の順序で採血する方法が最も早期にモニタリングできるかと思いますが、1回目の投与のピーク濃度はモニタリングには不適なのでしょうか?当院には救命センターがありますので、より早期にモニタリングできることが重要となります。

A:ピーク値、トラフ値の順序について、AUCを正確に推定するための重要な問題提起をありがとうございました。AUC-guided TDMで臨床的アウトカム(腎障害率)が得られた報告でも濃度の順序は決まっていませんので、臨床でのデータで検証していければと考えます。 そして、1回目の投与のピーク濃度がモニタリングに不適とは結論付けられるデータはありません。たしかに分布容積を評価する上では大きな意味を持つ濃度データであることは間違いありませんし、初回(1回目)投与後のピーク濃度→トラフ濃度(2回目投与前)の順序で採血する方法は、ご指摘のように最も早期にAUCを評価できる方法と思われます。ただし、薬物動態学的アウトカムがそのまま臨床的アウトカムにつながるかというと必ずしもそうではありませんので、そのメソッドの薬物動態学的・臨床的アウトカムについて今後の臨床研究で評価していくことが求められると思われます。

Q:トラフ採血はピーク採血の「前」・「後」のどちらでも良い?トラフ採血は貴学会のマニュアルのとおりピーク採血の「後」ではなく「前」の方が良い?

A:Bayesian法では正確な時間がわかればどこでもよい2点が原則と考えますので、AUC評価のためだけならピークを先にとらなければならない理由はないと考えます。ただし下記に示す理由でトラフ⇒ピークがよいと考えます。定常状態を待つことなく早期にAUC評価ができるというのがBayesian法のメリットで、ガイドラインではその点を強調しています。しかし、VCM 8時、20時 (or 10時、22時)投与で、もし朝ピークを採血してその後夜にトラフをとると、検査室でのトラフ濃度測定は翌日対応となり評価が遅れます。このようにピーク⇒トラフなら、VCM投与翌日朝初回採血でもAUC評価は2日後になり、従来通り2日後初回採血なら結果は3日目になってしまい、用量調節に遅れが生じます。また、これは学問的ではありませんが、VCM投与前後での採血の方が、医師、看護師には理解しやすいかもしれません。